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妊婦のマラリア予防としてクロロキンの使用 マラウィでのRCT

Sulfadoxine-pyrimethamine(ファンシダール)の耐性が妊婦に対するマラリアの予防効果を減弱させており、代替治療が必要とされている。南アフリカではマラリアのクロロキンの感受性が改善しているため、著者らは妊婦のマラリアに対してクロロキンの間欠的な治療もしくは予防内服、Sulfadoxine-pyrimethamineの間欠的投与の効果、妊産期の副作用を比較した。マラウィにある病院にてopen-label, single-centre, randomised controlledを行った。HIV陰性の20-28歳の妊婦を対象にコンピューターによりランダムに1:1:1の割合で、sulfadoxine-pyrimethamine (two doses of 1500 mg sulfadoxine and 75 mg pyrimethamine, 4 weeks apart), intermittent chloroquine (two doses of 600 mg on day 1, 600 mg on day 2, and 300 mg on day 3), or chloroquine prophylaxis (600 mg on day 1 then 300 mg every week)の3群に割り当てた。 Primary outcomeとしては胎盤マラリアの組織学的な診断、Secondary outcomeとしては妊娠期の貧血、低出生体重児および安全性とした。     

2012年2月~2014年の5月まで著者らは900名の女性をランダムに登録し、その中で765名から胎盤の組織のデータを得ることができた。108名が胎盤マラリアと診断された。胎盤マラリアの予防効果は、sulfadoxine-pyrimethamineと比べ、クロロキンは間欠治療群、予防群両者とも効果を認めなかった。protocol-specified analysesではクロロキン予防群はsulfadoxine-pyrimethamine群に比べ34%胎盤マラリアの発生率が低下していた。 (RR 0·66, 95% CI 0·46–0·95).

妊娠期の貧血はsulfadoxine-pyrimethamine群では5名で会ったのに対して間欠的クロロキン治療群では15名、クロロキン予防群では6名であった。低出生体重児はいずれの群でも有意差を認めなかった。sulfadoxine-pyrimethamine群で薬に関する副作用が出現した人は4名であったのに対して、間欠的なクロロキン治療群では94名、クロロキン予防内服群では26名であった。クロロキンの間欠治療群は副作用が強く、効果を認めなかった。クロロキン予防内服群は妊婦に対するマラリアに効果をきたす可能性があるが、より大規模な研究が必要である。
写真出典:Centers for Disease Control and Prevention

Lancet Infect Dis. 2018 Oct;18(10):1097-1107.

#マラリアの薬剤耐性が進む中、妊婦へのマラリア治療薬について悩むところです。致死的な副作用があるため、怖い印象のあるファンシダールはアレルギーさえ起こさなければ、むしろ安全に治療できることを知りました。妊婦のマラリアのスタディのPrimary outcomeは胎盤の組織検査になるんですね。印象的です。

マラリア根絶に向けて超好感度のマラリア診断および標準的な遺伝子検査の評価の比較
パプアニューギニアでのCross-sectional study

顕微鏡でも診断できない虫量の少ないマラリアは感染伝播に寄与しているが、一般的なPCRも診断には十分でないとされる。サンプリング手法を改善させ、超高感度の遺伝子診断が感度を最大限に向上させるが、ルーチンのスクリーニングで使用することは難しい。パプアニューギニアの沿岸部にある2か所のマラリア中等度流行地においてcross-sectional studyを行った。参加者から静脈血の採血を行った。2mlの血液の採取での高感度のPCR(ultra-sensitive quantitative PCR (us-qPCR))群をリファレンスとし、fingerprickで得られた200μLの血液を用いて、迅速キット(RDT)群、Standard 18S rRNA qPCR群、us-qPCRに分けて熱帯熱マラリア(Pf)、三日熱マラリア(Pv)の評価を行った。更に著者らはそれぞれの診断方法を用いて疫学的な解析を行った。RDTではPf感染に対してstandard qPCRで診断可能だったケースの半数が診断できなかった。

2016年12月から2017年2月まで期間で、300名の参加者から採血を行った。Standard qPCR 群では リファレンスと比べPfの診断率は54%(87/161)Pvの診断率は 52% (73/141)であった。us-qPCR群では更に Pfの診断率は7%, Pvの診断率は10%向上した。疫学的な特徴はstandard qPCRとリファレンスでは変化を認めなかった。Us-qPCRを使用すればfingerprickでも虫量が少ないマラリアの診断が可能である。迅速キットの感度は低く、虫体量の少ないマラリアの診断は難しく、感染伝播の評価としては不十分である。

写真出典:Wikimedia Commons

Lancet Infect Dis. 2018 Oct;18(10):1108-1116.

#遺伝子診断も改善を重ね感度が上がる中で超高感度遺伝子検査!(Ultra-sensitive molecular diagnostic test)という言葉がでてきました。これ以上感度が高い検査がでたらSuper-ultraとかになるのでしょうか。。。。こういう診断技術の向上はしかし実際の現場では使いにくく、現地での研究を難しくしている側面があります。

GMS会員】eラーニング
マヒドン大学熱帯医学短期研修の講義を中心に、熱帯医学、渡航医学、感染症に関する動画や、マラリアや消化管寄生虫クイズなど、わかりやすい教材で効率的に学習できます!以下、eラーニングの一部です。
※GMSeラーニングは、会員限定のコンテンツです。

1)マラリア鑑別のポイント
2)消化管寄生虫症 鑑別
3)マヒドン大学熱帯医学部コース説明 等

サンプル映像は、2017年マヒドン大学熱帯医学短期研修
「消化管寄生虫症概論」Prof.Yaowalarkです。

GMSe-ラーニングでは、マラリアや消化管寄生虫など、顕微鏡での特徴をクイズ形式で解説いたします。典型例を分かりやすく原虫別に出題していきます。これらの画像は、「マヒドン大学熱帯医学部出版(英語)の寄生虫アトラス」から抜粋したものと、実際の顕微鏡の画像を混在して入れています。実臨床では教科書画像のように分かりやすい画像とは限らないので、注意が必要です。
※GMS会員登録で、マヒドン大学熱帯医学部出版(英語)の寄生虫アトラス(Atlas of Medical Parasitology)が500円引になります。

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